第104話 |
わらべ学童では、「俺様」や「女王様」はリーダーになることができません。
公正な選挙で選ぶので、「優しくて頼りになる子」に票が集まります。
またリーダーとは、「班員の上に立つのではなく、率先して班員のお世話を焼く人の事」と教えています。
今回は、指導員も唸ったリーダー2人と、現在リーダー見習い中の男の子1人を紹介します。
彼は6年生になってから、やたら「最後やから・・・」というセリフを口にし、イベントの前には、自らガッツり気合を入れて参加してくる、とてもまじめなタイプです。
そんな彼は、サマーキャンプで、なかなか班を集合させることができませんでした。
彼は「急げ!」と言われたらのんびりし、何も言われないとすごく頑張る・・・そう、反抗期の入り口にいるのです。
そんな彼は、底抜けに優しく、「うちわ忘れた・・・」「懐中電灯がない・・・」と、次々に頼ってくる1年生に、いちいち「え〜!!マジで?うわ〜・・・どうしよう・・・」と、大きくリアクションしますが、ちゃんと「待ってるから、○○ちゃんと一緒にとってき?」と、いつまでも優しく待っているのです。
責任感が強く、最後の最後に席につき「遅れてすみません!」と一礼することで、自分に批判が集中するようにしていました。
プールの時にも、何度も集合できなかった1年生を探し出して、そっと背中に手を添え、集合場所に連れてきました。
指導員と目が合うと、にやっと笑うその笑顔に、グッと気持ちをもっていかれました。(笑)
彼女は、本当は積極的に前に出て、リーダーシップをとるのは、どちらかと言うと好きではないタイプです。
でも、必要に迫られると、頼まれると嫌とは言えない性格も手伝って、すごくしっかりと頑張ってくれるのです。(笑)
時には厳しく、いつもは優しい彼女には、男の子も一目置いています。
キャンプでの集合は常に早く、うまく班をまとめていることを感じましたが、何よりも「さぁ!次は何するん?」というワクワクした彼女の表情に、気持ちが表れていました。
所外保育での移動の際、電車に乗ると同時に彼女は、「1年生から順に座っていき〜」と、指導員より先に、女の子たちに指示を出していました。
我先に座ってしまった高学年の男の子たちが、恥ずかしくなってしまった瞬間でした。
集団が外れることが多く、人より目立ちたいけど自信はないし・・・という見習い中の彼を、なんとかみんなに認められる存在に押し上げたいと指導員は思いました。
おそらく学校では、和を乱すタイプでしょうし、なぜだか他人に厳しく自分に甘いのです。(笑)
3年生以上が残ったキャンプ3日目の川遊びで、指導員に「みんなの前で体操したって〜」と頼まれ、おずおずと前に出たその子に、「何やってんねん。岩の上にあがんねんやん♪」と、さらに厳しい条件をつけました。
「みんなができなくて、みんなの役に立つことで目立とうぜ!」と付け加えて・・・。
プールの時、集合できなかったみんなを責めて、たしなめられる場面もありましたが、彼は率先してみんなをまとめようと頑張っていました。
そして、準備体操のたびに「オレやってもいい?」と言いに来るようになったのです。
私たち指導員が考えるリーダーとは、「この指止まれ」ができ、「周囲の子のことをしっかりと考える」ことができ、「そんな状況を楽しむ」ことができる人のことです。
リーダーを経験しなければ体験できない葛藤や悩みや喜びや楽しさがあり、リーダーを支えてみなければ、わからないこともいっぱいあります。
いつもいつもリーダーは疲れてしまいますが、たまには率先して、誰かのために一肌脱げる・・・。
高学年になったら、ぜひ体験して欲しいことの一つです。
by.Sarusen