大阪市鶴見区わらべ学童

指導員つれづれ
第119話
鍛え

各小学校の運動会を目前に練習が佳境を迎えているようで、土埃の香りと共に帰ってくる子、疲れた表情で帰ってくる子が増えてきました。

運動会は子ども達の晴れ舞台ですが、運動神経、身体や心の発達、瞬発力や持久力など、総合力を発揮する場面でもあると思います。

それを考えると、「あとちょっとやから頑張ってね♪」と、エールを送ってしまうのです。

最近、近くのグラウンドで、インストラクターと思しき方が、二人の少年に走り方を指導しておられる場面を見かけましたが、スタートの瞬発力と最後まで力を抜かずに走りきる持久力について、何度も説明していたのが印象的でした。

身体的側面も心理的側面でも、運動面も学習面でも大いに関わりのある瞬発力と持久力。

それを引き出す、今回は「鍛え」について考えてみたいと思います。

私は、学習面で最初に直面する大きな壁となり得るものは、「漢字」だと考えています。

現在新指導要領が実施下で、覚えるべき漢字は飛躍的に増えています。

その学習は、子どもにとって苦役であり、相当な持久力と粘り強い精神力を必要とします。

それは、漢字について、自動的に覚える術がなく、「書いて覚える」のが最も適している学習法であり、子どもにはこの「覚えるまで書く」ことが苦手だと思えるからです。

学習における第一の課題がこの「漢字」であり、国語力の基礎であることはもちろん、全科目の文章問題について正しく集中して読み解いていく力の基盤 となり、ひいては子ども達に「辛抱」する気持ちを育てるのです。

いつも、学習を指導する際、「教科書はぜ〜んぶ日本語で書いてあるやろ?やから国語、特に漢字はがんばらなアカンねんで」と話しています。

低学年から漢字学習で苦労している子は少なくありませんが、そこにはある程度「鍛え」の要素が不可欠であることを理解しておられる方はどのくらいおられるでしょうか?

TVでも取り上げられ、その理にかなった独特の指導法で有名な「花まる学習会」代表の高濱正伸先生は、『「言ってもやらない」とか「泣いて反発する」など、手を焼いている方もおられるかもしれませんが秘訣はスタート。他のあらゆる「学び」についての見解が、「本人のやる気を大切に育む」ということなのに対し、漢字だけは「泣こうがわめこうが、厳しくやらせてよい」というのが、ここ数年の私の信条でもあります。甘やかさず厳しい態度で接し、ぜひとも素敵な「成功体験」という結果になるよう応援してあげてほしい』と言われています。

「成功体験」を前提にした厳しさが必要だという所に、大きく頷いてしまいます。

ここでいう厳しさは、「ならぬものはならぬ」という毅然とした態度のことです。

「鍛え」を必要としている時に、「かわいそう・・・」では「ならぬ」のです。

文字通り、「心を鬼にして」立ち向かって頂きたいのです。

もう一つ、漢字学習で苦労している子の共通点が「姿勢の悪さ」です。

「姿勢ぐらい・・・」と思われがちですが、これは脳や背骨の発達にも大いに影響を及ぼすたいへん重要なポイントです。

今まで、学習に没頭するあまり、無意識で姿勢が悪くなっているとばかり考えていましたが、・・・筋力の持久力の無さから維持できずに姿勢が崩れる⇒背骨が常に曲がっている事によって脳に新鮮な血液や酸素が行き渡らない⇒脳が酸欠状態になるため長時間かけても能率が上がらない⇒背骨が湾曲してしまう・・・と、悪循環につながると聞けば「姿勢ぐらい・・・」では済まされません。

ここにはまさに子ども達が「鍛え」を必要としている理由があるのです。

直立歩行をはじめてから、たかだか5〜10年程度の子ども達は、しっかりと鍛えない事には、姿勢の維持が難しいからです。

「鍛え」とは、怒ってビシビシやることでは決してありません。

鉛筆の持ち方が悪いと言われては指を輪ゴムで縛られ、姿勢が悪いと言われては背中に竹のものさしを突っ込まれ・・・そんな経験がある方(え?私だけ?・・・笑)にはわかりにくいのですが、ルソーは著書エミールの中で、「本当の教育は、教訓を与えることではなく、訓練することだ」と書いています。

まずは自らが姿勢を正し、しっかりと継続的に訓練してあげることが大切なのですね。

まさに、「身」を「美しくする」と書いて、「躾(しつけ)」なのです。

ふと見かけた運動会の練習風景で、体育座りがきちんとできていない子どもの多さに驚いてしまいました。

私たちは、子どもを「鍛える」ということを、もう一度しっかりと見つめ直すべきなのではないでしょうか。

by.Sarusen


指導員つれづれindex⇒
トップページに戻る⇒
(C)わらべ学童 all rights reserved.