大阪市鶴見区わらべ学童

指導員つれづれ
第46話
旅立ちの時

家の近くの高校では、早くも卒業式が行われ、「出会いと別れの季節」が近付いてきていることを感じる今日この頃です。

わらべ学童でもつい先日、恒例の卒所旅行に5・6年生が取り組み、6年生が「現役学童っ子」として参加する行事は、残すところ学童の卒業式である「卒所式」のみとなりました。

毎年写真の枚数が増え続け、準備が大変になってきている「卒所アルバム」の制作が始まり、指導員の中にも「いよいよ・・・」という雰囲気が高まり始めています。

私には、成長を積み重ねてきた3名の6年生たちにとって、わらべ学童での生活が、絶対マイナスにはなっていないことを確信しながら、もっとやれることがあったのではないか・・・そんなことを自問自答する季節でもあります。

今回卒所する中に、1人の男の子がいます。

低学年の頃、自信がなかなか持てなかった彼は、「作文」や「工作」の場面では、必ず、他の子の3倍以上時間がかかる子でした。

ひらがなや漢字の書き取りでさえ、ノートが破れるくらい何回も消して書き直して、指導員の所に持ってくるのでした。

どうやら「自分を表現する」ことが、かなり苦手な様子でした。

でも、きっと表現したくても、できないもどかしさがあるから、いつも彼は拳を握りしめ、唇をかみしめながら、涙を流して悔しがるのだろう・・・と、指導員は彼の思いを受け止めることからはじめました。

そんな彼の殻をぶち破るチャンスとして目を付けた、けん玉の取り組みを通じて、上の子と張り合いながら、親御さんの目にも明らかな変化をとげ、少しずつ自信を深めていくのがわかりました。

やがて緊張の浮かぶ事が多かった表情は、あふれんばかりの笑顔に変わり、指導員が「コイツ、いい顔して笑うようになったな〜」と、特に感じるようになったのは、4年生旅行の時でした。

上の子や下の子、仲間とのかかわりの中で、自分の居場所を見つけ、自分の身の丈と歩幅をしっかりつかみ、高学年として歩みだした姿が、まぶしかったり、それまでの彼と違いすぎて、違和感を感じたりしながら見守ってきました。

また彼は、卒所式のたびに巣立っていくお兄ちゃん・お姉ちゃん達に伝えたい事を紙に書いて、当日読もうとするのですが、涙で声が出なくなり、毎回指導員が代読してきました。

6年生になる春、ようやく自分の言葉を自分の声で、メッセージとして伝えることができました。

あれから早くも1年が過ぎました。

今度は、自分が巣立つ番、そして送り出される番です。

彼は、送り出す在所生たちの姿を、どんな思いで見つめるのでしょうか。

彼は、どんな思いで、学童で過ごした6年間を振り返るのでしょうか。

わらべ学童のOBではない私は、「向こう側」から見える景色を知りません。

一度見てみたい気もしますが、今はまだ「想像」で結構です。(笑)

by.Sarusen


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