大阪市鶴見区わらべ学童

指導員つれづれ
第54話
山の神さまの教え

先ほど、最後のテントを倉庫になおして、サマーキャンプ09の後片付けがひとまず終わりました。

今年は、梅雨明けが遅れたこともあり、キャンプの日程中ずっと天候が悪く、毎日天気図と空をにらみながら、また子ども達の体調の変化に気を配りながら、「今、何ができるか?」を考え続けた4日間でした。

前日の雨で、とても良く冷えた状態(笑)の滝と川が一行を出迎えた初日。

予定よりも1時間早く到着できたこと、5・6年生のみの先発であることも手伝って、いよいよ始まったサマーキャンプの期待感が、わくわくと膨れ上がっていくのがわかりました。

また、褒め上手のお父さんお母さん方に乗せられるように、料理の腕を振るう子ども達、かまど競争も成功して、リーダーズキャンプの成果を見せることができ、その表情は自信に裏付けされて、すごく輝いて見えました。

「生きること」と、大きなテーマで取り組んだ恒例の焚き火の時間も、揺らめく炎を眺めながら、谷川俊太郎さんの詩を鑑賞し、それぞれ考えた「生きることってどんなこと?」を発表し合いました。

夜中に少し雨が降っていましたが、テントでぐっすり眠り、朝を迎えました。


後発の1〜4年生が到着する前に、テントを立ててしまおう!と頑張っている最中に事件が起きました。

突然、バケツをひっくり返したように大粒の雨が降りはじめ、「一旦集合して雨宿りしよう!」と叫んだとき、立てかけのテントのポールが折れ、倒壊してしまいました。

予備テントで対応できるとは言え、全身ずぶ濡れになってしまいました。この雨で、気温も水温もぐっと下がってしまい、子ども達が一番楽しみにしている川遊びが中止になってしまいました。

なんとか、食事作りに取り組み、お楽しみ会で思い切り盛り上がった後、それぞれがシュラフにもぐりこみました。

また、全員テントで宿泊する予定でしたが、体調が心配されたため、1〜3年生は宿舎内で宿泊することになりました。


翌日は、1・2年生がカレー作り、3年生以上は沢歩きがメインの活動です。

早朝から下見に行き、ここまでなら安全と選んだ場所は、例年の4分の1の距離、それでも少しでも子ども達が楽しみにしている活動ができれば・・・との思いから、「がっつり遊ぼう!」と、気持ちを切り替えて準備を進めていきました。

140個のおにぎりが完成した瞬間、大人でも慄くようなすさまじい風と雨がキャンプ場に吹き付けました。

怯える子ども達をなだめながら、未体験の状況にたじろぎ、ポールが折れ、ゆっくりと倒れていく子ども達のテントをただ見ているしかありませんでした。

しかし、一瞬風が止むのを見逃さず、一刻も早くテントの状況を見極め、子ども達の荷物を運び出すために、OB達が飛び出して行きました。

穏やかな清流は茶色い濁流と化し、沢歩きなどという状況ではなくなりました。

そんな流れを恨めしそうに眺めながら、プチ遠足をし、不完全燃焼ながら「メインの活動」を終えるしかありませんでした。

バーベキューを楽しんだ後、1・2年生は帰路につきました。

3年生以上の子ども達は、テントを失ってしまったため異例の宿舎泊となり、若干テンションが上がりました。

みんな久々の布団の感触を楽しみながら、どっぷり眠りに落ちていきました。


最終日も予報は、曇りのち雨・・・小雨の中、オリエンテーリングの準備をしました。

なんとか、予定にはない川遊びの時間がとれないか、打ち合わせと下見を重ね、時間を作りだしましたが、無情にも雨・・・。

昼食を済ませた子ども達は、わずかに期待を持ちながら、次々に水着に着替えて集まってきます。

指導員として失格なのかもしれませんが、もう動けませんでした。

子ども達は、ずっと我慢してきたのです。

何とかしてあげたいけど、不甲斐なさばかりが募り、何もできませんでした。

子ども達の気持ちをずっしりと両肩に感じながら、じっと耐えていると、空から光がさしてきました。

「晴れたで!」「行ける?」子ども達の表情が、ぱっと明るくなりました。

このチャンスを逃すと、もう後はありません。

20分で着替えを完了することを条件に、川へ繰り出しました。

冷たさに震えながら、水の掛け合いをしたり、泳いだりしていると、あっという間に時間は過ぎていきます。

「あと5分!」「あと3分!」「あと1分!」時間をコールしても、誰一人文句を言う子はいませんでした。

気がつくと、6年生の女の子達も、ガンガン泳ぎ、お父さんたちもお母さん方も、「予定外やわ〜」と言いながら、全身ずぶ濡れになってくださいました。

閉村式では、何とか子ども達を楽しませようと、頑張ってくださったお父さんお母さん方、絶えず先頭を切って作業し、労をいとわず走り回ってくれたOBさん達への感謝、そしてまだ何か出来たのではないかという後悔と面目のなさから、涙があふれました。

後片付けが終わり、今年のキャンプが子ども達に何を残してくれたのか、気になりながら作文の指導を始めました。

意外にポジティブな子ども達の言葉を読んで、救われる思いもしながら、自然の前では、人間がいかに小さくて弱い存在かを謙虚に受け止め、それでも力を合わせると、大きな力が発揮できることを実感できたキャンプだったのではないかと考えました。

キャンプの間、天候が保たれれば良いですが、そんなに都合よくはいきません。

来年は、雨でも楽しめるプログラムをどっさり用意して、リベンジに燃えながらキャンプを迎えていきたいと思いました。


参加して下さった多くの皆さん、本当にお疲れ様でした。

必ず、皆さんの後ろ姿が、子ども達の心にしっかり焼きついたことと思います。

厚くお礼申しあげます。

by.Sarusen


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