第72話 |
この間、突然始まったかのように見えるお子さんの反抗期についての相談が、高学年の親御さんから多く寄せられました。
あえて「突然始まったかのように見える」と書いたのは、必ずその兆候は何かあるはずで、その事に気付いておられなかったから、そう見えるのではないかと感じているからです。
その見落としの原因は、どこから来たのでしょうか?
一般的に「反抗期」は、「9・10歳の節」等とも呼ばれ、思春期の入り口を指します。
何を言っても「いいやんか!」「もう、うっとうしい!」、理由を問えば「知らん!」「わからん!」、たまには要望を聞いてみようと声をかけると「別に」・・・親御さんにしてみれば、「ついこの前まで、屈託のない笑顔で、いつも素直に頷いていたウチの子は、どこに行ってしまったの〜(涙)」です。(笑)
そんな「わかりやすい反抗期」をイメージしていたら、見落としてもやむを得ないと思えるのが、「わかりにくい反抗期」。
些細なことで涙を流してみたり、部屋の隅に黙ってうずくまってしまったり、いつも特定の少数の子同士で徒党を組んでヒソヒソ話・・・そんな世に言うところの「反抗期」の気配が全く見えない「内向型の反抗期」または「不安定期」と呼ばれても良いものが含まれているのではないかと思っています。
心理学的には、この時期は「うつ」や「ノイローゼ」に良く似ているとも聞きますので、お子さんの様子を見られて、考え込み過ぎたり、悩み過ぎたりしているのではないかと、親御さんが心配されるのも無理はありません。
また、そのように落ち込み塞ぎこんでいるかと思えば、突然、度を過ぎる悪ふざけに走ったり、暴れまくってみたりして、雷を落とす必要もあるわけですから、お子さんの様子に気を揉み、振り回され、いけない事とは知りながら、「腫れ物に触るような対応」になってしまうこともあるのではないでしょうか。
子ども達の様子を見ていると、今まで頼りにしていた「自分の価値観」が崩壊して、新たに構築される時期であるが故に、不安になり、わからなくなり、自分で考えられるキャパを超えてしまっているので、悩んで見える・・・そんな風にも思えます。
そんな時こそ、「あなたをとても大切に思っているからこそ、今とても心配しています」という愛情が伝わる事が、すごく大事じゃないかと思っています。
口で言うほど簡単ではありませんし、そんな時だけ伝えると確かに取ってつけた感じで、不自然なのですが、お子さんの周りにおられる大人達・・・親御さんをはじめ、おじいちゃんおばあちゃん、親戚や先生や保育者や指導者達から「あなたをとても大切に思っているからこそ、今とても心配しています」と伝えられた愛情をエネルギーに変換して、成長の次の段階に進み、思春期を謳歌していくものの様に見えるのです。
誤解を恐れずに言うと、その事さえ伝わっていれば、そっとしておいても良いのではないでしょうか。(私は、保育時間にしか関わる事がないので、このような表現になってしまいますが。)
1人で考えることだって、とても大切な、保証するべき時間ですし、古来から「日にち薬」だと言われるのもその通りだと思うからです。
もう一つのキーワードは、大人の「自己開示」だと思っています。
子ども達が大好きな話ランキング第1位は、やはり「親御さんや先生の失敗談」でしょう。
これは、子ども達にとって、自分が生まれた瞬間から、親御さんは「親」であり「大人」であったため、大人からすると不思議なことですが、そんな大人達にもかつて「子ども時代」があり、同じように「反抗期」や「不安定期」があった事=子ども達に大変興味をそそる新鮮な事実なんだろうと感じます。
また、大げさに言えば「人生の先輩」の失敗談は、遠かった大人との距離をぐっと近づけ、身近なものにしていくようで、子ども達の食い付きだって違ってきます。(笑)
正しい事を伝えたり、正論を押し付けたり、間違いを指摘したりする事が多い、私のような立場の大人はなおさらです。
そんな大人達が、自らの経験をさらけ出して話す事が、子ども達の心の扉をノックしはしないでしょうか?
親御さんたちは、お子さんにとっては人生の見本(お手本でない事はいつかまた触れます♪)や標本です。
「この道はいつか来た道♪」と、生命保険会社のCMにもあるように、大人は先駆者なのです。
親御さんから自分の経験を話したことをきっかけに、親子で会話をキャッチボールしながら、大らかにこの「反抗期」「不安定期」を乗り切っていけたらと思います。
そう、「子の道は、いつか来た道・・・」なのです。
by.Sarusen