第80話 |
人間の変化や成長のはじまりには、必ずと言って良いほど、「きっかけ」と呼ばれる転機があるように思います。
その「きっかけ」は、時として大人の想定外からやってきて、想像以上の力を発揮して、子どもを大きく変化させる力を持っています。
随分前になりますが、リーダーズキャンプの時、指導員が注目していた女の子がいました。
とてもとても大人しく、声もか細〜く、他の子の前に立って・・・というより、物静かに他の子の後ろをそ〜っと、ついていくタイプの子です。(これ、決して言い過ぎではありません・・・笑)
しかし指導員は、そんな消極的とも思える面を、決して否定的にとらえていたのではありません。
でも、「いつか、この指とまれ!って、指を出す経験をしてほしいな〜。」と思っていました。
その年のリーダーズキャンプでは、たいへん暑かったこともあり、各班で炊いたごはんが大量にあまるという不測の事態を招きました。
子どもにどうするか聞いても、その結構な量のご飯を、「どうやって処分するか」しか浮かんできません。
そこで、とても優しいリーダーだった男の子とその女の子を呼んで、「今からおにぎり隊を作ってもらいます!隊長は○○ちゃん!副隊長は△△くん!」と、指示を与えたのです。
それまで、男の子と遊ぶことなど皆無な女の子でしたが、ごっこ遊びが好きな事は知っていましたし、このおにぎり隊が成功したら、何よりも楽しいに違いない・・・という判断でした。
はじめは、男の子と無言で、黙々とおにぎりを握っていましたが、さすがに二人で片付く量ではないため、お手伝いが必要になってきました。
副隊長が、恐る恐る「みんなに手伝ってもらおうか?みんなに言うてみ?」と、優しく働き掛けています。
すると、「みんな〜!仕事が終わったら、おにぎり握るの手伝って下さ〜い!」と、聞いたことがない大きな声が、キャンプサイトに響きました。
ついに、その女の子が、みんなの前で大きな声を出した瞬間でした。
指導員ばかりか、周りの子みんながびっくりする中、ニコニコ笑っているおにぎり隊の隊長と副隊長・・・「おもしろさ」のにおいをかぎつけた子が、次々に入隊を申し込んでいきます。
すかさず副隊長が機転を利かせ、「隊長の許可をもらったら、こっちに並んで下さ〜い」と、隊長の立場をしっかり守りながら、列を整理していました。
各班の作業が終わったら、もう全員でおにぎり隊の「おにぎりまつり」に加わって、大盛り上がりです。
夜の反省会で、上の子みんなに褒められた女の子は、嬉しはずかしの「高学年デビュー」となりました。
それ以来、おやつや公園に行く時に、みんなに声をかける場面にも、度々登場する様になったその女の子。
指導員は、脳裏に焼きついた笑顔と共に、「きっかけ」が与える変化の大きさを思い、そのチャンスを逃さなくて良かったと胸をなでおろすのです。
その女の子が、この夏、わらべのアルバイト指導員にと手を挙げたとしたら・・・「きっかけ」が与えた変化の大きさは、やはり予想以上なのだな・・・と、ニンマリしてしまいます。(笑)
by.Sarusen