大阪市鶴見区わらべ学童

指導員つれづれ
第86話
失敗バンザイ!

「4年生の、4年生による、4年生のための、4年生旅行」が終わりました。

その仕上げとして、作文を書きあげ、次つぎと提出しているところです。

このイベントは、いかに準備を徹底的にやろうとも、彼らにとっては未経験の事ばかりですので、大小様々な失敗が付きまといます。

指導員は今回の旅行も、あえてたくさんの「失敗」をしてほしいと考えていました。

そこには、子ども時代にたくさんの失敗をして大人になっていってほしい、大人になって失敗した時に、その失敗からしっかり何かを学び、経験として刻みつける事が出来るようになってほしいという願いが込められています。

少し大仰に言えば、「失敗する権利を保障」しているのです。

さて、今回の旅行中、最も職員の頭を悩ませたのは、失敗に対して予想以上に臆病になってしまい、特に移動中の判断力や行動力が必要とされる場面で、なかなか一歩が出ない4年生の姿でした。

事前に「今回の旅行に必要なのは、確(認)、連(絡)、冒(険)・・・そう!かくれんぼうやで!」と話をしていたのですが、練習次第で何とかなる「確(認)、連(絡)」とは違い、「冒(険)」だけは、「おい!勇気出せよ!」なんて声かけをしたところで、チャレンジできるようになるはずもありません。

目的地で楽しんでいる姿とは、あまりにも対照的なオドオドぶりに、何度も「やってみて間違ってしまったら、やり直したらいいねんで」と励ましの言葉をかけましたが、失敗という地雷を踏まないように、そろりそろりと歩く姿に大きな変化は見られないまま、とうとう旅行も終盤に差し掛かりました。

職員の心の中には、「失敗させたい・・・それも伝説に残るような大きな失敗をさせたい!」そんな気持ちが、むくむくと膨らみ始めていました。(笑)

伏線は、草津駅で1本前の新快速に乗ろうとしながら判断に迷い、駆け込み乗車しそうになったところを指導員に阻止されたことでした。

大人的には、次の電車に乗っても「予定通りやん♪」なのですが、子どもたちはプログラム通りに学童に着けるのかと、若干追い込まれて不安な感じになってしまったのです。

そしてJR京橋駅で、まごついている案内係が改札を出て立ち止った瞬間、地下鉄に乗るにも関わらず、切符係が京阪電車の切符売り場を見つけて、「切符を買いま〜す」と言い出したのです。

チャンスは今です!「買わせていいやんな?」まのっちゃんが小声で確認してきます。「いいよ〜!買わせてあげて♪」くろっぺは、切符係が買ってきた切符を、二度見も三度見もして子ども達が気づくように小芝居をしましたが誰も気づきません。

大急ぎで移動した地下鉄京橋駅の改札では、案の定“キンコーン!キンコーン!”と派手なアラームと共に“ガシャン!”とゲートが締まりました。

「えっっ!」と、固まる子ども達・・・人生初の結末に、後ずさりしています。(笑)

「これは連帯責任やな。さぁ!みんなで戻って払い戻ししよう!」の声で、我にかえる子ども達。

残された時間はあとわずか・・・でももう一度、窓口まで戻るしかありませんでした。

そこからは、「時間ぎりぎりやから・・・ちょっと急ぎます」という案内係や時計係の指示に従い、終始続いた小走りにも、もちろん付き合わなければなりませんでしたが・・・。

失敗しそうな時に大人が先回りして注意をするのは簡単です。

でもまずは、子どもに重大な事故が起きる可能性がない時は、黙って見守ることが必要なのではないかと思うのです。

そして子どもが失敗したら、落ち込む子どもに寄り添いながら、失敗から学ぶことを教えてあげることが、近年ますます大切な事になってきているように思えてなりません。

子どもがリアルに失敗から学ぼうとしている矢先、大人が先回りして叱ったり、小言を並べてそれを回避させ、バーチャルのまま終わらせることになっては、もったいない気がします。

失敗はリカバリーできるということを学び、失敗を恐れないようにしてあげる事が大切なのではないでしょうか。

子どもの自律的な成長や、しなやかな成長を願うならば、そのエネルギーとして自己肯定感(私は私であっていいという実感)や自己重要感(私は他人から重要だと思われているという実感)を高める必要があります。

そのチャンスは、失敗をリカバリーして、自信をつけるプロセスの中にこそ潜んでいると考えます。

「失敗したらやり直したらいいやん♪」そんな大人の大らかな一言が、「失敗する権利を保障」することにつながり、ゆくゆくは、子ども達のしなやかさのエネルギーになるとしたら・・・伝説の「京橋キンコーン!事件」も、きっと無駄ではないと思えてきます。(笑)

サポートして下さった保護者の皆さん、ありがとうございました。

by.Sarusen


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