指導員つれづれ

★第123話「原型」★


先日、21歳になるOBが、血相を変えて駆け込んできました。

「ちょっと聞いてほしい・・・モヤモヤが晴れへん・・・」とのこと。

聞くと、ついさっき、肌寒く小雨も降る中で、傘もささずに薄着で歩いているお父さん、お母さんと小学1年生ぐらいの女の子、家族三人連れと関わったというのです。

急に、「この辺りに宿泊できるところはないですか?」と、聞かれたらしく、思い当たるところもなくて、「ないと思います」と答えていったん立ち去りかけましたが、何か事情があるのではないかと考えてるうちに気になって気になって、結局Uターンしてあとを追いかけた彼。

駅の近くで見つけて話を聞くと、なんとも不自然な説明・・・。

それでいてとても困っている様子が窺え、「携帯電話も今はない」と話す両親に、検索して見つけた今里近辺の宿泊所に電話をかけてあげ、「交渉してみては?」と提案したが、うまくいかなかった様子。

その間、「この人はいい人なのか?本当に困っているのか?」「本当は悪い人なのではないか?実はお金が目当てなのではないか?」と、ずっと葛藤し続けていた様子。

最後には、「子どもさんが雨に濡れると寒いと思うので、どうか使って下さい」と、持っていた傘を渡して帰ってきたとのことでした。

「俺、何ができたんやろうなぁ・・・」という彼に、「おまえすごくいい奴やな!」と、言ってしまいました。

「身体の大半が優しさでできている」と評された学童っ子時代。

今では見た目も立派になり、夢を追いかけて走っている姿は、大変眩しい彼ですが、まさにその「原型」を見た気がしたのです。

ひたすら周囲の子、特に下の子に対して優しかった彼が、普通ならやり過ごしてもおかしくない状況で、親身になって上げられたことが、対応の良しあしを超えて、何よりもうれしいことに思えてならなかったのです。

さるせんにも良い人だったかどうかは判断がつかないと前置きしながら、「その状況を何とかしてあげれる人、なかなかおらんのちゃうか?でも、なんもできなかったっていう絶望の中にも希望があると思うで。その地方から出てきた家族が新しく生活を始める大都会大阪で途方に暮れてた時、優しいお兄ちゃんが声をかけてくれて、大阪もいいとこかもって、一瞬でも思ったとしたら?その見ず知らずの家族の為に、できる事、全部やってみたやん?おまえはベストを尽くしたんやで。」と語りかけると、「なんかスッキリしてきた・・・」と彼。

それでも、「今思うと・・・」「やっぱり・・・」と、それでも善悪をつけようとする彼に、「もうええやんか?どんだけ考えても、正解はないような気がするで」と話しました。

「お前の中に今回の出来事を通じて、何か残すとしたら、その状況を何とかしてあげれる人になってやる!とかじゃない?(笑)」というと、「それ目指します!ははは!」と笑いながら帰って行ったのでした。

ちょうど今「原型」を作りかけている子ども達にも、話してあげたいと思った出来事でした。

by.Sarusen

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