指導員つれづれ

☆第13話「背中を追いかけて」☆


先日、毎年恒例の高学年サイクリングに取り組みました。

今年は、いつもの公園から出発し、淀川沿いへ出て河川敷を走り、京阪牧野駅付近から1号線まで上り、大阪府と京都府の境界線にタッチして帰ってくる・・・往復約54km、過去最長の距離を走ります。

いつもは元気な3年生も、「どうしようかなぁ・・・」と一瞬躊躇し、「行くわ!」と決心してからも、上の子から「よし!いっしょに頑張ろうな!」と声をかけられると、とたんに微笑が引きつってしまう感じでした。

その中に、自転車の街乗りに慣れようと、予定日まで一生懸命練習してきた3年生の男の子がいました。

直前には、緊張と不安がにじみ出た表情を見せ、仲間たちや指導員から「大丈夫、大丈夫!」と励まされていました。

当日の朝、「自転車の鍵がみつからないんです・・・」と、電話がありました。

前日の帰宅時には間違いなくあったとお母さん、電話口で泣きじゃくる男の子・・・。

「わかりました。ギリギリまで待ちますから、どうぞ冷静に探してみてください。」としか言えず、何とか参加できる方法はないかと考えてみましたが、こちらも焦ってしまいなかなか見当たりません。

出発時間まで待って再度電話を入れましたが、鍵は見つかっていないとのこと・・・。

しかし、ここでお母さんの機転が、素晴らしく働きます。

「自転車屋さんが開くのを待って、後ろから追いかけますから出発してください。」と、言ってくださったので、連絡を取り合いながら途中で落ち合うことにして、子ども達に事情を話し出発することになりました。

それぞれがサイクリングを楽しみながら、6年生は「どこらへんで追いついてくるかな?」と、休憩のたびに気にかけてくれていました。

走行距離が15km超える頃、3年生が遅れはじめました。

中には涙ぐんでいる子もいましたが、自分たちにも経験があるので、上の子が声をかけて励まします。

折り返し地点の手前には、そんな3年生の気持ちをそぐかのように、長くだらだらと続く上り坂・・・「行け〜っ!」「がんばれ〜!」と声をかけながら、上の子の中にも根を上げる子が出るほどのしんどさでした。

ようやく「京都府 八幡市」という標識にたどりつき、休憩しましたが、男の子はまだ追いついてきません。

昼食を予約している焼肉レストランへ向けて、再スタートした後、すぐに携帯電話が鳴りました。

「お〜い!みんな!ついに追いつくみたいやぞ〜!」と言うと、口々に「ここで待ってようや!」「どっちから来るん?」と子ども達。

長い自転車の列を道端に寄せて待っていると、小さい自転車に乗った男の子とその後ろにお母さんが見えました。

「お〜い!ここやぞぉ〜!」「よぉ〜がんばったなぁ!」手を振ったり拍手をしたりして迎えられ、男の子はとろけそうな笑顔で笑っていました。

お母さんに聞くと、仲間と走ってもしんどい道中を、男の子は、お母さんを励ましながら、時には急かしながら、休憩もほとんどとらずに走ってきたというのです。

まだ慣れていない自転車なのに、ただただ「みんなに追いつきたい!」「早く一緒に走りたい!」という思いで、ひたすらペダルを踏み続けた男の子に、胸が熱くなり、鼻の奥がつんとしました。

お母さんも、その子の気持ちに寄りそったからこそ、「鍵をなくしたのは、あんたが悪い!今日は家にいなさい!!」とは言わず、追いかける方を選んでくださったのだと思います。

無事に全員がゴールし、子ども達に声をかけて帰した後、職員で話をした時に思いました。

子ども達は、しんどい事もありながら、親御さんからしっかりとサポートを受けつつ、上の子達の背中を追いかけているんだなぁ・・・子どもってすごいなぁ〜!めっちゃ素敵やなぁ〜っ!

きっと男の子は忘れないと思います。

仲間の背中を追いかけて走ったサイクリング、その後ろで見守ってくれたお母さんの優しさ、拍手で迎えてくれた仲間たち・・・。

鍵の管理はしっかりしないと・・・でも、鍵がなくなったからこそできた経験ではないかとも思えるのです。

「ピンチはチャンス」「災い転じて福となる」なんですよね。

筋肉痛から開放された指導員も、ようやく「いい取り組みやったなぁ・・・」と思うことができました。(笑)

サポートして下さった、保護者のみなさんやOGさん、本当にありがとうございました。 by さるせん

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