指導員つれづれ

☆第6話「仲間たち」☆


小学校最後の夏休みを迎える6年生は悩んでいました。そして残念がっていました。

2月の卒所旅行、4月の食事会、5月の運動会、6月の運動会、7月のリーダーズキャンプとサマーキャンプ・・・どれも6年生が「最後やし!」と、並々ならぬ思い入れをもって取り組んだ企画で、1度も『祝!全員参加!』にならなかったのです。

人数も多く、塾や習い事、家の都合や体調不良、様々な理由から全員揃うことはありませんでした。

とても団結力の強い高学年ですが、さすがに「もしかしたらバラバラなのではないか」と、思ってしまうのも無理はない状況でした。

ある日、男の子達が「みんなで揃って何かしたい・・・」と話しているのを聞いて、「そんなに揃うことにこだわるのなら、全員参加できるイベントを考えてみたら?」と話しました。

みんなを集めて聞くと、「やりたい!」「近くやったら何とかなるかも・・・」と、サマーキャンプ直前にも関わらず、ぐっと気持ちの高まりを感じさせ、「オイオイ・・・キャンプも近い事やし、今日のところはそのへんで・・・」と、ブレーキをかける必要があるほどでした。

しかし、キャンプ後に何度話合っても全然ないのです。全員揃うことができる日が1日もないのです。これには指導員も頭を抱えてしまいました。

中心に立って頑張っている6年生も、がっかりしていました。

「全員参加!」の縛りをなくせば、すんなり決まっていくことは目に見えています。

でも、それではこのイベントの意味がなくなります。「う〜ん・・・」唸り声しか出てきません。

それでも子ども達は必死でした。

塾でなかなか学童に来れない子に電話をし、都合がつかないか確認したり、家で習い事の時間や日程を調整できないか親御さんと話し合ったり、費用もできるだけ安くなるように下調べをして試算したり・・・、今まで見せたことのない表情で、本当によく頑張っていました。

なんでそんなに頑張れるのか聞くと、「仲間だから・・・」と言う子がいました。

一緒にここまで学童で生活してきた仲間だから、「楽しむ時もしんどい時も一緒に!」という子ども達の本心と願いを感じ、「何とかするのではないか・・・」という期待を込めて、「全員参加!」のまま調整を続けさせました。

頑張っている子ども達を励ましながら、数日が過ぎました。

「1日だけ、みんなが揃える日があってんっっ!」鼻息も荒く報告に来た6年生。「よっしゃ〜っっ!」ハイタッチで喜びを分かち合いました。

途中、連絡もなく休み続ける子もいました。中心に立っている子の気持ちが理解できずに、心無い発言をして責められた子もいました。

当日も、忘れ物や体調不良で直前までヒヤヒヤさせられましたが、出発の時間には、36名のキラキラした笑顔がありました。

「よう集ったな!ようがんばった!」「休んでいた子は、このつながりを実感して欲しい。1人じゃないねん。休んでても、その子の事を思ってくれる仲間がいてるねんで。今日は思い切り楽しもう!」

中学生のOBも「すごいなぁ!やるなぁ!」と、一緒に喜んでくれていました。

40日の夏休みで、たった1日だけ高学年の全員が同じ空間で過ごせた日。

しかもたった1時間半でしたが、近くのプールで、思いきり遊びました。はしゃぎまくりました。お互いに声を掛け合いました。

帰りはプールの入り口で、嬉しさのあまり記念撮影までしてしまいましたが、とびっきりの笑顔がはじけていました。

「みんな来たよな!」「よかったなぁ〜!みんな来れて!」口々に話す子ども達を見ながら胸が熱くなりました。

おしゃべりしたり歌ったり、上機嫌で学童に戻った子ども達。

「おまえ達には最高の仲間がおるね。お疲れ様!」

大満足で帰っていく子ども達が帰った学童で、「大成功でしたね!」「よかったなぁ・・・」と、職員もほっとしました。

たかだか「全員参加」・・・。されど「全員参加」・・・。

ちょっとうらやましささえ感じるわらべっ子達のつながり。

自分の道を進み始めた子ども達に、何度も言いたいのです。

「おまえ達は一人じゃない!最高の仲間がそばにいることを忘れるな!」

今回も、たくさんの保護者の皆様に多大なご理解とご協力をいただきました。

おかげで子ども達は、こんなに素敵な思い出を作ることができました。この思い出は将来必ず素晴らしい財産になると思います。

本当にありがとうございました。 by さるせん

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