指導員つれづれ

☆第7話「人と人の間」☆


2学期が始まり、久しぶりに学校の友達と再会した子ども達は、話題に事欠きません。

「○○って奴なぁ、おれより背が高くなっててん!」「○○はめっちゃ焼けててな、真っ黒やねん」・・・などなど。

「ふぅ〜ん。そうなんやぁ・・・」と、指導員は相づちを打ちながら、順調に学校生活が始まったことを確認してほっとします。

そんな時、みんなが学校の話で盛りあがっている輪の中にいながら、少し暗い表情を浮かべる子が気になっていました。

それとなく水を向けても話に乗ってこないし、その話題には触れてほしくないという感じです。

そんな様子を見ながら、自分から話す気になるのを待つことにしました。

ある日、親御さんとやり取りしている連絡ノートの中に、「やっぱりな・・・」と思うことが書いてありました。

「おやつの後、少し話そうか?」と話しかけると、「うん・・・」と応じてくれました。

「学校しんどいんか?」「え?」「いやいやお母さんも心配してはるみたいやしさ」「あ〜ノート?・・・実はね・・・」そう言って、この間のしんどさを少しずつ話してくれました。

「4年生くらいの時は、クラスのみんなと仲良かったのに、最近苦手な子、合わない子がいるねん」「しょうもない事まで一緒にせんと気がすまないみたいで、一緒じゃなかったら、裏切りやっとか言うねん」「言いたいことはあるけど、ケンカする気はないねん」

この間、悶々と心の中を支配していたであろう葛藤や思いが溢れてきます。

「仲間だから仲良くしたい」「友達だから一緒にいたい」と何度も話していましたが、指導員は思った通りの意見をぶつけました。

「そんなんしんどいやん!」「え?」「そりゃしんどいし、不自然やん?」「・・・」

「さるせんのバイクチームは100人くらい仲間がおるけど、全員と仲良いわけじゃないで」と、人と人との間にある距離の話をしました。

全員が周りに合わそうとしているわけじゃないから、こっちから合わせていかないと合わない人もいること、全員と合わなくてもやっていけること、友達相手に苦手意識を持つのは、自分の考えができてきた証拠で悪いことではないこと・・・などを話し、「社会に出たら合わない人だって、必ずおると思う。今はその練習段階やな」と結びました。

それでも、「4年生くらいの時は、クラスのみんなと仲良かった」を繰り返しています。

きっとその頃は、すごくすごく頑張っていたので、しんどさよりも充実感が勝っていたのでしょう。

「頑張ってたんやな」と、指導員自身の経験も交えて話すと、何度も涙を浮かべながら、真剣に話を聞いています。

話しているうちに、ストンっと胸に落ちたのでしょうか、「よし!俺そうしよう!気にせんとくわ!」と、晴れやかな笑顔で立ち上がりました。

それは、無理して友達に気を遣いながらたくさんの友達がいることに安心していた自分から、一人一人のつながりをしっかりと見つめなおしながら、自分らしく自然体で仲間を作っていこうとする自分に変化した瞬間のようでした。

「おう!そうか、しんどくなったらいつでも話に来いよ。」「うん、ありがとう!」

みんなが公園に遊びに行った後のガランとした室内。

その子の事をすごく気にしながら、「なんか深い話みたいやし・・・」と、話に入るわけでもなく様子を伺うわけでもなく、ただ同じ空間にいて、その子の吐くため息を一緒に呼吸してくれていた子たちが言いました。

「終わった?」「うん、終わった」「公園でスッキリ遊ぶ?」「よっしゃ行こか!」

学童の子ども達の間は、大人が思うよりも深く強くつながっているのではないかと思う場面でした。

人と人との間に生きる私達だからこそ、お互いにとって、とても大切な話ができたように思います。

言うまでもなく、彼らはまだ発達途上で、少なからず様々な訓練や練習(中には特訓も!?)をしながら成長しています。

「訓練なしで社会に出るということは、今夜いきなり電話が鳴ってオシム・ジャパンに召集されるようなものやで」と訳のわからない言葉もかけましたが、「それはツライなぁ・・・」と笑っていました。(笑)

将来彼らが「本当の仲間」の中で、笑顔で過ごしていけるように願わずにはおれません。

また、そんな彼らの手本にはなれなくても、見本になるような生き方をしていきたいと改めて思いました。 by さるせん

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